short novels
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the dreams of she
3.海
3.
彼女は何処かへ向かっているようだった。
声を発する事が僕は出来ず、ただただその白い背中を追う。
進んでいる間にも時は過ぎ、
寂れた建物達は僕等を包んでゆく。
影は重く、掴む事が出来ないような儚さをまとっていた。
そんなものたちを横目で見ては溜息をつく。
何だか悲しくなるような街だ。
感情を根こそぎ持っていかれるような気分がする。
何も無い事で街に色が無いようにも見える。
錯覚というやつか。
不思議だ。
すると遠くで彼女の白い背が急に消える。
僕は慌てて走り、彼女の消えた場所へと急ぐ。
T字路を右折したところに彼女は居た。
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2006/04/06/蒼羅