short novels
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the dreams of she
3.海
2.
次の日、いつもの様に防波堤へ行っても彼女は居なかった。
いつでも彼女は僕が来る前から此処に座って海を眺めているのにおかしい、と僕は思った。
彼女に何かあったのだろうか、と。
すぐに僕は悪い事ばかり想像してしまう。
今まで何年も"幸せ"というものに縁が無い僕は感情の一部が欠如してしまって物事を上手く考えれなくなっているのかも知れない。
何処かいつも片方がなく、不恰好になってしまう。
とにかく彼女の姿を確かめたくて、僕は足を街へと向けた。
彼女が海に来ないだけでこんなに焦っている僕はさぞかし愚かにみえるだろう。
自分の情けさに嫌気がさす。
街は寂れていて、何処まで進んでも人の気配がなかった。
その光景はただの廃墟にしか見えず、僕は堪らず目を逸らす。
すると向こうの通りで白い背が動くのが見えた。
彼女だった。
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2006/04/06/蒼羅