short novels





the dreams of she


1.出会い


1.

海辺の防波堤はいつでも人気(ひとけ)が無く、時を忘れた場所だった。
打ち寄せる波も色あせて、悲しさを漂わせる。
苔むせたコンクリートは哀愁を醸し出していた。

こんな人に忘れられたこの地に、今年も僕はおり立っていた。
此処は僕の行きつけの場所だったのだ。
もう何もかもウンザリだった、一人のほうがよっぽど癒される。
こうして一人、海を眺めていた方がどれだけ良いか。僕は身に染みて知っている。
僕にはよっぽど一人狼が似合うようだ。

防波堤にの上に座ると、僕はほっと息をついた。
何処までも続く蒼穹の海は死ぬ事を知らない。
この海は何時から、どんなものを見続けてきたのだろうか。
一体どれだけの苦しみを見てきたのだろう。




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2006/01/03/蒼羅